2015年11月23日月曜日

独り言 ~革靴~


近年、私の中で靴への興味が高まっている。
いや、靴に興味を持ち始めたと言った方が適切か。

そもそもは、2、3年程前に年相応の身嗜みをと考え始めたのがきっかけだった。それまでは、1万円前後の靴を1・2足で気に入った靴を毎日履いていたのだが、これではいけないと思って、思い切って3万円近くもするリーガルの靴を購入した。自分としては高い靴を購入した(家計から出してもらった)から、大切にしようと思い、ネットや書籍などで手入れ方法を調べている内に、シューツリーの存在、ローテーションの重要性などを知り、甲革にも種類がいろいろあることや、底材の違いで特徴が異なることなども知っていった。



情報を集めていく中で、靴のデザインの違いによるフォーマル度の違いを知った。ビジネスではどこへ出ても問題になることはないストレートチップを持っていなかったので、慌てて買い足したりもした。すると今度はストレートチップの中でも形状によってまた与える印象が異なるということもわかってきた。買い足したストレートチップは流行りのロングノーズなものだったので、今度はロングではないごく普通のストレートチップが欲しいと思い、経験したことのない革底靴も欲しいと思うようになり、革靴の基本といわれるプレーントウも欲しいと思い・・・・、欲しいものだらけになってしまった。更には、靴だけでなく、スーツはどうだ、シャツもジャストサイズのものが欲しい、脛がが見えないようにホーズソックスも必要だ、と予算管理して優先順位を決めて行かなければとても賄いきれない状態に陥る。少ない小遣いの中で予算管理と支出予定を計画しても、情報を集めて続けているうちに、銀付き革のお手入れはこっちのクリームの方がよさそうだとか、ブラシはあれが良いのだろう、磨く布も必要だ、汚れ落としはこれか、シューツリーはこっちが良さそうだとか、欲しい物がもう際限なく広がっていき、使える金が少ないからよいようなものの、独身で自由になる金があったら、それこそ片っ端から購入していただろう。移動中はネットで靴やケア用品の情報を漁り、週末に家族とショッピングモールに行けば靴売り場に吸い寄せられ、外出すれば理由を作って新宿や銀座界隈の靴屋に行って靴を眺める。家族が寝静まると、せっせと靴にクリームをいれて磨き上げ、一人悦に入る。傍から見れば正常とは呼べない状態に陥った。

欲しいものがたくさんある状態はいつまでも変わらないだろう。だからこそ、一度立ち止まって冷静に考えないと、本来の目的を見失いそこへ到達できないように思えてきた。まずは精神的に、そして金銭的にもクールダウンする必要がある。そもそも革靴は自分にとってどんな位置づけなのかを見つめなおして、本当に必要なもの、購入するものの優先順位の見極めて行こうと思いたった。

まずは、年相応の身嗜みをするという原点に立ち戻り、革靴とは私にとってどのような存在なのかを見つめなおしてみたい。

私にとっての革靴は、ビジネスをする上での装いの一部である。最近は革靴単体に魅力を感じ始めているが、本来は仕事上必要になるアイテムの一つに過ぎない。自分の装いが相手に礼を失することがなく、好印象を与えることができれば尚良い。また、相手とコミュニケートする時に劣等感や恥ずかしさなどの気後れをなくして、等身大の自分で相対することができるようにするという意味合いもある。つまり、世間一般で減点がつくことがない服装で、尚且つ自分自身も恥ずかしくないと思える服装である。私が本来目指したものはそこだったはずだ。

私はもともとお洒落にあまり興味はないし、疎い。今年のトレンドはなどと、雑誌などで盛んに煽っているのを見ると、洋服メーカーやそれに関連する人々は今年の売り上げを創るのに必死なんだなという見方をしてしまう方で、取り入れてみようだとかという気をあまり起こしたことがない。
洋服を着るのは寒いからとか、靴を履くのは足を怪我しないようにとか、迅速に動けるようにとか、基本的には実用優先の理由で着たり履いたりする。そして、どうせ購入するなら長く使えるものをと思い、質実剛健なものを選ぶ傾向にある。(価格優先になることが最近は多いが)
こういう服装をしたいとかいうのもあまりない。強いて言えば、若い頃、長持ちしそうという理由でミリタリー系のものを好んで着用したくらいだろうか。
人間中身が大切で、外見に凝る人間は中身の薄い人間だと考えていた。

だがしかし、年のせいで丸くなってきたのか、分別がつくようになってきたのか、装いは相手の為であることを納得し、自分も相手に失礼のないようにするべきと考えるようになった。
長い年月を経て形成されてきた社会文化の中で、一般常識に反して独自の主張を通すのも一理あるとは思うのだが、相手に不愉快な印象を与えるリスクを冒してまで、自分の主張を通す程の服装への拘りを私はもっていない。
だから、不可のない装いをするべき、可を上回るのならば尚良いという結論に落ち着く。

では、不可とならない恰好とはどんなものなのか。
清潔で文字通り身の丈に合ったサイズの物を着用していること。汚いとか、ふざけている、だらしない、カジュアルだな等という印象を与えないものだろうと思う。

では革靴に焦点を絞り、どのような靴を何足揃えればよいのかを考えてみる。

マイナスの印象を与えないことを第一に考えるならば、ストレートチップということになる。
プレーントウの立ち位置が微妙に理解できていないが、プレーントウであっても良さそうだ。
ブローグ系等の装飾の入った靴やスリッポンは、二の次、三の次になる。

その観点を踏まえながら自分のワードローブを振り返ってみると、まずストレートチップが4足。クォーターブローグが1足。フルブローグが一足。ダブルモンクが1足。モンクストラップのUチップが1足。合計8足。

週5日の出勤日に対して、ローテーションするのに充分な足数が揃っていると言わざるを得ない。最低中二日以上あけて登板させよと言われていることを考えても、ストレートチップ4足だけで充分やりくりできることになる。その倍の足数があるのだから、中一週間はもとより、土日休みを考慮すれば、2週に一回程度の登板になるローテーションを組めることになる。

足数だけで見ればそうであるが、揃えるべき靴という点も考慮して考えてみると、揃えるべき靴に含まれる靴は、ストレートチップ4足と大目に見てクォーターブローグ1足だろうか。
これだけでもローテーションするに充分で、修理等で一足しばらくいなくなっても何ら問題ない足数だ。

本当にこれ以上必要だろうか。

必要かどうかという観点から鑑みれば、前の考察から必要はない。
いま足元にいる靴が使用に耐える内は、また、外観上不快な印象を与えない状態を維持している内は買い足す必要はない。
『あなた、足何本あるのよ?』と嫌味たらしく言ってくる妻の質問は、嫌味どころか正鵠を射ていたのだ。

となれば、これから先、靴を買い足すという行為は道楽や趣味であるということを肝に銘じておく必要がある。現状の靴に使用上の問題が発生しない限りは、靴が足りないという理由は発生しないのだから。

だが、靴を購入する苦しい言い訳は色々と心に湧いてくる。
雨が連続した時にしっかり乾かすことができるようにと考えればもう一足必要だ、とか、
革底の通気性を知ってしまってゴム底を履く気がしなくなったから革底を1足買い足す、とか、
基本中の基本と言われるプレーントウがワードローブにないから一足買い足す、とか・・・・

あれも欲しい、これも欲しいと思ってはいるが、冷静に考えれば充分過ぎる程の靴をもう所有しているのだ。そのことに気が付いていない振りをしている自分がいるわけだ。

でも、そんなの関係ねぇ。(・・・ちと、古いか)
わかっちゃいるけど、やめられない。
と、靴にのめり込んでいこうとする自分がいる。

靴に関しての本来の目的は十分に達成している現状を再認識して、今後も靴を購入し続けるなら、もう趣味の領域となることを忘れないようにしよう。であれば、あまり深く考えず、気ままに、懐の許す範囲で自由に買い足していくのも悪くない。

だが、あまり靴が多くなりすぎると今度は、何か月も履かない靴が出てきたり、お手入れの負担が大きくなって嫌気がさすかも知れないとも思う。靴の手入れは好きだが、『やりたい』から『やらなくちゃ』に変わってしまうと、きっとお手入れ自体がしんどくなるなだろう。現状の8足でもこの靴はいつメンテしたっけか?なんて記憶が曖昧になることが時々ある。そんな理由で、メンテの記録や思ったことを書き留める為にこのブログを始めたのだ。

欲しいと思う靴は沢山あるけど、自分が管理できる数は限界に近いと思う。
何か月も履かない靴があるとか、メンテを疎かにして靴をダメにするとかいうのは、靴を買い足したいと思う気持ちとは全然別次元の避けなければならない基本的なことと思う。

そう考えると、自分が管理できる足数はあと1・2足のような気がするから、買い足すならやはり厳選して後悔のないような選択をするべきなのだろう。

このエントリーを読んだ人にはさっぱり理解できなかったかも知れないが、靴に纏わることを来し方行く末含め、じっくりと考えてみて、自分の立ち位置が把握できて良かった。進むべき方向性もはっきりした。もやもやがすっきりした。

仕事用の革靴はもう充分。ここから先は趣味の世界。靴の増えすぎでダメにする靴のないよう気を付けていこう。

ようし、仕事用の靴はあと1・2足で限界だから、その次は休日用の靴を揃えていくぞ!

って違うだろ、おい(汗

5 件のコメント:

  1. 5足以上になってくるともはや趣味の領域ですね、やっぱり。

    確かに1か月くらい履かなかったり、半年くらいお手入れしない靴も出てきています。
    靴は履いて、お手入れしてあげることがいちばんなので、そういう意味ではもう打ち止めでよいのでしょうけれど、世に出る靴は魅力的なものが多いので困ったものです。

    私の場合は革靴の多くがビジネスツールと趣味兼用のため、数が増えたらそれはそれでよいかなと気楽に考えています。すでに生涯で必要十分な数の靴があるような気がしていますが、きっと死ぬまでにあと20足くらいは増えるでしょう(笑)

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    1. コメントありがとうございます。

      ”あと”20足ですか(笑)
      下手な靴屋よりも充実したシュークローク(いやシュールームかな)になりますねw

      今回、ドライに冷静に現状を見つめたつもりですが、悲しいかな理屈と感情は別物なので、、、自分との折り合いの付け方を模索します。

      そういえば、近々積雪地帯へ出張します。ダイナイトソールではないですが、ゴム底靴の氷雪上歩行具合と、現地の人々の靴(底)文化を観察してこようと思います。

      事前の情報収集では、ゴム底、革底関係なく革靴を履いていくこと自体ナンセンスらしいので、どうしたものかと考えています。






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    2. 働いている間に、年に1足+α買うとしたらこのくらいになるのかなと。
      まぁ、そのうち家族から打ち止めがかかる可能性もありそうですが...

      積雪地帯のビジネスパーソンってどんな靴履いているのでしょうね。
      東京でも多くは運動靴みたいな黒靴だったりするので、大半はそれが積雪バージョンになっただけな予想をしていますが、では逆にレザーソールを履いている人はいないのか、やっぱりダイナイトみたいなパターンソールが多いのか興味深いですね。いやそもそも革靴自体がナンセンスというところではスーツに何を合わせるのか、気になります。

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    3. コメントありがとうございます。

      確かに年1足でそのくらいになる計算ですね。最初20足と聞いて魂消ましたが、よくよく考えれば、現実的な数字でした。失礼しました。

      積雪地帯の靴文化、私も興味深々です。
      私の予測はブーツが主体で、ひどい場合は長靴ではないかと推測しています。
      時間とチャンスがあれば、都市部と少し離れた所とでの違いや靴屋の品揃えなども見てみたいと思っています。こちらでは見かけない、雪用底のパナテトラやコロバンショの靴がきっと置いてあるのだろうと。

      防寒グッズは揃えましたが、靴の対氷雪グッズはなかなか見つけられないので、履いていった靴が用を為さないようなら現地調達しようと考えています。

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    4. 積雪地帯から戻りました。

      革靴自体がナンセンスというのは誇張された表現だったようです。
      革靴を履いている人、普通にそこらにいました、ほぼ雪用ゴム底のようでしたが。
      どうやら現地では、雪用の靴底を使用した靴を履くことが常識になっているようです、冬は必ずスタッドレスタイヤを履くように。

      革底の人は屋外では一人も見つけられず、空港で一人と百貨店で靴売り場の店員が履いているのを見かけただけでした。

      私の靴は31ER2足でしたが、危ないながらもなんとか無事でした。
      私が滞在した期間は大雪の降った後で、町には雪がだいぶ残っていましたが、気温が当地にしては暖かめで、雨が降ったりもしていました。

      日中など、暖かい時はゴム底で圧雪の上などを歩いてもほとんど不便は感じませんでしたが、気温が零下近辺やそれより下がると、通常のゴム底では危険極まりないとつくづく思い知らされました。
      暖かったとはいえ夜間は冷え込み解けた雪が再び凍りました。転ばないように歩幅を小さくして注意して歩いていても足を滑らせてしまうような状態で、ゴム底靴は歩くに全く適していないと感じました。

      雪に強そうなブーツや、雪用ゴム底らしき靴を履いている地元民っぽく見える人達でも結構足を滑らせたり、ひどい時は転倒した人もみかけたので雪用
      底でも安心はできないようです。

      空いた時間にリーガルものぞいてみましたが、商品棚の6割は雪用底の靴の展示になっていました。ゴム底靴に雪用底をハーフラバーで貼り付ける人も結構いるとか。雪降ったり、積もったりした時は、雪が靴に入るのを避ける為に雪用底のブーツが活躍するのだそうです。また、靴に着雪したりして靴内が濡れることもあるとかで、防水の冬底靴を選択する人も多いとか。

      やはり、非積雪地域の私たちが知らない常識があるようです。

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