2015年11月28日土曜日

独り言② ~シューツリーはいつ入れる?~

靴を長持ちさせたいなら必要と聞いて、私も靴の数以上に持っているシューツリー。

プラスチック製のものや木製のもの、踵が棒状のものや踵状のもの、甲の幅が調整できるものやできないものなど、種類や形も様々である。

このシューツリーを靴に入れるタイミングをどうするかについて、意見が分かれる所らしい。



帰宅して靴を脱いだらすぐ入れるという人。
一晩くらい入れずにおいて、放湿させてから入れるという人。

ツリーを入れるタイミングってそんなにシビアで影響の大きいものなのだろうか。

私はと言えば、基本的に靴を脱いだらすぐ入れている。
酩酊して帰宅した時など、極稀に翌朝に入れるケースもあるが、大抵は帰宅して靴を脱いだらツリーを入れて紐をしめ、ブラッシングと乾き拭きをして乾燥場所に設置するというのが私のルーチンになっている。

つまり、私は靴を脱いだらすぐ入れる人に属する訳だが、
正直、ツリーを入れるタイミングについて、あまり深い考えがある訳ではない。
すぐ入れた方が何かと都合が良いからという理由が一番大きいような気がしている。

都合が良いというのは、以下の2点
・帰宅後の埃落としのブラッシング時に、ツリーを入れた方が皺も伸びてブラッシングしやすいこと
・靴に入れていないと邪魔になるツリーが、あるべき場所に収まって片付くこと

この入れるタイミングについてネットで両者の意見をザっと見た感じでは、ツリーを入れる目的、あるいはツリーに最も期待していることが異なっていることが、入れるタイミングの違いに表れているのではないかという気がした。

なんとなくだがこんな感じではないだろうか。

すぐ入れる人は保型重視。
翌朝入れる人は放湿・カビ防止重視。

目的が違えばタイミングが違うのも頷けるのだが、そうでもないのだろうか。
カビ防止(放湿)重視でありながら、すぐ入れる派の人がいるとか、保形重視でありながら翌朝派の人がいるとか、保形も放湿もひっくるめてこのタイミングという人とかがいるとなると、答えを出すには検証データが必要になりそうに思う。

だれか実験した結果を公表していないのかな。そんなデータがあっても広まっていないのか。

私がツリーを入れる一番の目的は、保型である。
というか、ツリー本来の役割はこれなんじゃなかったっけ?
木製であることで多少の吸湿効果は期待できるのかもしれないけど、それはプラスチック製のツリーと比較した場合であって、本当に湿気を取るなら、吸湿剤を入れた方がよっぽど効果的なのではないだろうか。
放湿(防カビ)目的でツリーを翌朝に入れるという方は、もしかしたら、靴を脱いですぐにツリーを入れ、カビを発生させてしまった経験をもっている方なのかなとも思う。

ネットでデータがないか色々探したところ、べじたんさんという方が様々なデータを公開されているのを見つけた。革、クリーム、ワックスなどについての科学的データを公開をされていたり、サドルソープや靴の歴史を遡っておられたり、非常に興味深く勉強になるブログである。(文系頭の私には少々理解が難しいこともあり、なかなかはかどりません)

そのデータも参考に、根拠の薄弱な独断と偏見(明確な思い違いもあるかも)だが、革と湿度とカビの関係について考えてみたい。(靴の耐久性については除外。)

まず、影響がありそうな要素を書き出してみる。

・外気の湿度 (※外気というのは靴内の空気に対しての外気、靴のすぐ外側の空気の意味)
・外気の循環
・底材の種類
・甲革の素材
・甲革の蝋分の乗り具合
・靴の汚れ

まず、外気の湿度から。
靴の湿気が放出されていく過程を考えると、靴内の湿度より外気の湿度の方が低いことが条件になる。革の素材や状態に関わらず、湯気もくもくの浴室に置いたら乾きそうにないことは容易に想像できるわけで、湿度計で図ったことはないが、恐らく一日履いた後の靴内は湿度100%に近いだろうから、外気の方が湿度が高いということはほぼないと考えて良いのだろう。

外気の湿度が低ければ低いほど、革の湿気は早く放出されるので、外気の湿度管理こそがカビ防止に最も大切な要素なのではないかと思う。

冬の乾燥する時期はあまり心配はないと思うが、湿度が高くなる梅雨時期には要注意である。
家の中でも水回りから離れた湿気の低い場所を選んで保管することが好ましいのではないだろうか。
私は自分の寝室に保管している。玄関に近く、水回りから割と距離があるので湿気は家の中では低い方である。

また、湿度を下げるにはエアコンを使用する又は、除湿機を稼働させることである。
エアコンや除湿機のある部屋に保管する、あるいは、保管場所付近に除湿機を設置したり、エアコンの影響を受けるようにしたりすることで湿度を多少管理することができるのではないだろうか。


次に、外気の循環。
いくら外気の湿度が低くても、空気に動きが無ければ放出はされないか、とてもゆっくりなものになるだろう。
濡れた洗濯物は、空気の動きが無ければ乾かない、あるいは乾きが遅い。
恐らく空気は湿度が高い方が重くなるから、空気に動きが無くても、靴の湿気が空気に放出されたら、湿度の高い重い空気が靴の回りで発生して、下方に動くという緩慢な流れができるとは思う。が、靴の高さまで湿気を吸った重い空気が溜まってしまえば、もう放湿はされなくなってしまうだろう。下駄箱などに入れておいてカビが生えやすいというのはこの空気の循環がないからなのではないだろうか。
なので、靴の周辺の空気を動くようにすることも大切なことだと思う。
下駄箱に入れているなら、少なくとも一日に一度は下駄箱中の空気を入れ替えるようにしたり、部屋の空気そのものを入れ替えたり。
あるいは、室内で空気が動き続けるように微風を送り続けたりするなども有効なのではなかろうか。

そして、底材の種類。
革からの湿気放出を考えた場合、放出される面積が広い方が、時間当たりの放出量は多くなると思われる。革靴なので、甲はどの靴も革であるが、底はゴムの場合もある。ゴムは、さすがに湿気を通さないと思われる。放出面積を考えた場合、革底とゴム底とでは革底の方がゴム底に比べて2倍弱の革部分の面積を持つことになる分、放出しやすいと言えると思う。
ただ、革の表面積が増えても、靴底が床や下駄箱と接していたのでは放出は少なくなるだろうから、靴底も空気と触れるような保管が望ましいだろう。 
つまり、ゴム底靴の方がより湿気に注意した方が良いということになる。

次は、甲革の種類と甲革表面の蝋分の乗り具合
甲革には種類がいくつもある。透湿性に関わりそうな種類の違いは、大きく分けてコレクテッドグレインとフルグレインだろうか。要は、革の銀面を削っているか否か。削っている場合は起毛させたり、顔料や樹脂を塗布しているものがある。流通している革の多くは、生産性と歩留りの良さから、顔料、樹脂を塗布したものが多い。表面にそのようなものを塗ったものは、通気性が悪くなる傾向がある。フルグレイン(銀面)の場合は仕上げにもよるようだが、一般的に通気性は損なわれにくいようだ。
ただ、べじたんさんの資料を拝見していると、ガラス張り革でもボックスカーフ等よりも優れた透湿性を持つものもあったので一概には言えないようだ。
また、銀面を使用した甲革でも、艶出し等の為にワックスを塗っていれば透湿性は損なわれる。
湿気放出(カビ防止)を優先させるなら、ワックスやクリームを塗る量を少なめにした方がよいだろう。

最後に靴の汚れ。
カビは有機物を栄養源として成長するらしい。革そのもの、クリームなども有機物を含んでいるからすべてがカビの温床になりうるわけだけど、埃などの靴由来以外の有機物は少しでも取り除いておいた方がカビの発生を防げると言われているようだ。また、汚れを取り除く作業で付着したカビ菌を除去することもあるのではないかと思われる。

他に外気の温度も要素としてあるかと思ったが、カビが繁殖する温度というのは人間の生活範囲の温度なので、温度によってカビの発生を制御することは難しいらしい。
冷蔵庫でもカビは生える。
カビが生育できないような高い温度では、靴自体に熱の影響が出る心配がある。

さて、革と湿度とカビに関係しそうな要素をそれぞれ考えてみたので、次は、ツリーをいつ入れるのが良いのかということを考えてみる。
私の結論は、その人が靴を保管する環境による所が大きく、一概に言えないと思われる、というものである。

玉虫色でつまらない結論だが、靴を保管している場所は人それぞれな訳で、ある程度、近似した環境の人々をグループ化することはできるかもしれないが、脱いだらすぐ入れた方が良いなどという単純な答えにはとてもならないのではないか。

私が一番大きな影響がありそうだと思っている、外気の湿度を例にとってみる。
例えばマンションの1階と5階に住む人では部屋の湿度自体に差があるだろう。
住んでいる家が、谷合に位置している人と斜面の中腹に位置している人とでも湿度は異なるだろう。
住んでいる地域が北海道と沖縄であればこれもずいぶん湿度が違うはずである。

いま例にあげた3例を、外気の循環以降の要素でそれぞれの保管状態を想定して場合分けをしていくことを考えれば、それだけでも条件の多様さを納得されることと思う。

一概に言えないならばどう対処するか。
自分の靴の保管状況は自分しかわからない(自分でもわかっていないかも)のだから、自分で考えて、その上で、過去経験から学び必要な対策を講じていくよりほかにない。

私はローテーションに入っている靴にカビが発生したことがないので、あまりカビについて注意を払っていない。私が靴を保管している環境は、靴を脱いですぐにツリーを入れてもカビは発生しない環境なのだろう。

同じように靴を脱いですぐにツリーを入れてカビが発生した経験がある方は、まずツリーをすぐ入れたことがカビ発生の原因かどうかを確認する必要がある。
確認したうえで、ツリーを入れるかわりに吸湿剤を入れるという方法もあるだろうし、ツリーは入れるが、靴の保管場所を変えてみるという方法もあるだろうし、ワックスを塗るのをやめてみるという方法もあるだろうし、防カビ剤を塗布するという方法もあるだろう。

他にも多くの対処方法があるだろうけど、どの方法でカビを防げるのかは、やってみないとわからないし、季節によって、メンテの違いによって、結果に差がでることもあるかも知れない。
カビ発生の原因が何にあったのかを試行錯誤して大まかにでも見当を付け、自分のできる範囲で考えられる対策を模索し、その工数も考慮して実際のカビ対策をとることが遠回りに見えて一番の近道なのではなかろうか。

シューツリーはいつ入れる? 第一回答 本人しか見つけられない。 第二回答 保管環境と手入れ次第。

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